トーストはなぜバター面を下にして落ちる?
「トーストはバターを塗った面を下にして落ちる」
これはマーフィーの法則の代表例としてよく知られています。マーフィーの法則とは「もし失敗する可能性があれば,それは必ず失敗する」という,人間の経験則を表した考え方です。その中でもトーストの例は,特に身近な体験の1つでしょう。朝食の準備中にうっかり手を滑らせ,落ちたトーストを見るとバター面が床についている――そんな経験が皆さんにもあるのではないでしょうか?
しかし本当にこれは「運が悪いだけ」なのでしょうか。実はこの現象,物理を用いることで合理的に説明することができます。今回はトーストが落下する様子を力学的な視点から見ていきましょう。
条件を考える
考えやすくするために,今回は次のような条件を仮定します。
・トーストは平均的なテーブルの高さ約70~80mから落下する
・落下中,トーストは回転しながら自由落下する
・下向きを正とし,空気抵抗は無視する
このとき,鉛直下向きの運動は以下の自由落下の公式で表せます。
\[h=\dfrac{1}{2}gt^2\]
\(h\):落下距離,\(g\):重力加速度,\(t\):落下にかかる時間
トーストの落下時間
今回は高さ \(h=0.8m\),重力加速度 \(g=9.8m/s^2\) として計算してみます。
\[0.8=\dfrac{1}{2}\times9.8\times t^2\]
これを解くと
\[t\approx0.4s\]
つまり,トーストが床に着くまでには約0.4秒かかります。この短い時間のあいだにトーストが180度以上回転すれば,バターを塗った面は下を向くことになります。
回転する理由
トーストが回転する理由は,テーブルの端から落ちる瞬間にあります。トーストは水平な状態のまま真下に落ちるわけではなく,テーブルの端を支点として回転を始めるため,落下の初めから角速度をもっています。
このとき必要なのは次の2点です。
・テーブルを離れる瞬間の角速度
・トーストの初期の傾き
これらが分かれば,落下中にどれだけ回転するかを計算することができます。今回は詳しい計算は省略しますが,実際に求めてみるとトーストは落下するまでに約180度~270度回転することが分かります。その結果,床に到達したときにバター面が下を向く確率が高くなるのです。
いかがでしたか?
こうしてみると,「トーストがバター面を下にして落ちる」のは,単なる不運ではなく,テーブルの高さや落下時間,回転運動によって自然に起こりやすい現象であることが分かります。日常の何気ない出来事も視点を変えてみると,そこには物理法則がしっかりと働いています。今回の内容が気になった方は,安全等に配慮したうえで実際に試してみるのも面白いかもしれませんね。
今日の公式
\[h=\dfrac{1}{2}gt^2\]
※この記事群は【教科別ミニ読み物】の一部です。
他教科のミニ読み物は、まとめページからご覧いただけます。

