導入
皆さんは\(\sin{1^{\circ}}\)の値を求めてみたいと思ったことはありませんか?
三角比の値の表を見たとき、当時高校1年生だった筆者は「\(\sin{1^{\circ}}\)の値は厳密にはどうなるんだろう?」という疑問を持ちました(表に書いてある「近似値」ではなく「厳密値」を求めようとしました)。
そこで当時筆者が考えた方法を、この記事を読んでくれる皆さんにも共有しようと思います。
sin15°, cos15°, sin18°, cos18°を求める
まず、半角の公式を用いることで、\(\sin^2{15^{\circ}}=\frac{1-\cos{30^{\circ}}}{2}=\frac{1-\frac{\sqrt{3}}{2}}{2}=\frac{2-\sqrt{3}}{4}\)
\(\sin{15^{\circ}}>0\)より、\(\sin{15^{\circ}}=\sqrt{\frac{2-\sqrt{3}}{4}}=\frac{\sqrt{8-2\sqrt{12}}}{4}=\frac{\sqrt{(\sqrt{6}-\sqrt{2})^2}}{4}=\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}\)
同様にして、\(\cos{15^{\circ}}=\frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}\)となる。
また、\(\sin{18^{\circ}}\)については、関係式\(\sin{54^{\circ}}=\cos{36^{\circ}}\)を用いる。
\(\theta=18^{\circ}\)としたら、\(\sin{3\theta}=\cos{2\theta}\)となる。
これに3倍角の公式、2倍角の公式を使うと、\(3\sin{\theta}-4\sin^3{\theta}=1-2\sin^2{\theta}\)となる。
移項して整理すると、 \(4\sin^3{\theta}-2\sin^2{\theta}-3\sin{\theta}+1=0\)
因数分解して、\((\sin{\theta}-1)(4\sin^2{\theta}+2\sin{\theta}-1)=0\)
よって、\(\sin{\theta}=1, \frac{-1\pm \sqrt{5}}{4}\)
\(0<\sin{\theta}<1\)より、\(\sin{\theta}=\frac{-1+\sqrt{5}}{4}\)
よって、\(\sin{18^{\circ}}=\frac{-1+\sqrt{5}}{4}\)
これに相互関係 \(\sin^2{18^{\circ}}+\cos^2{18^{\circ}}=1\)を適用することで、\(\cos{18^{\circ}}=\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}\)
加法定理を用いてsin3°を求める
加法定理より、\(\sin{3^{\circ}}=\sin{(18^{\circ}-15^{\circ})}=\sin{18^{\circ}}\cos{15^{\circ}}-\cos{18^{\circ}}\sin{15^{\circ}}=\frac{\sqrt{5}-1}{4}\cdot \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}-\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}\cdot \frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}\)
よって、\(\sin{3^{\circ}}=\frac{(\sqrt{5}-1)(\sqrt{6}+\sqrt{2})-2\sqrt{5+\sqrt{5}}(\sqrt{3}-1)}{16}\)
3倍角の公式・カルダノの公式(高校数学範囲外)を用いてsin1°を求める
\(\sin{1^{\circ}}=t\)とおくと、3倍角の公式より\(\sin{3^{\circ}}=3t-4t^3\) となる。
よって、\(\sin{1^{\circ}}\)は\(t\)についての3次方程式\(4t^3-3t+\frac{(\sqrt{5}-1)(\sqrt{6}+\sqrt{2})-2\sqrt{5+\sqrt{5}}(\sqrt{3}-1)}{16}=0\)の解である。
3次方程式の解の公式であるカルダノの公式を用いてこの方程式を解くと、
\(\sin{1^{\circ}}=-\frac{24(1-i\sqrt{3})}{\sqrt[3]{\frac{1}{2}(\sqrt{\frac{391378894848(9-\sqrt{5}-\sqrt{6(5+\sqrt{5})})}{4+\sqrt{7+\sqrt{5}+\sqrt{6(5+\sqrt{5})}}}-3131031158784}\ -442368\sqrt{\frac{2(9-\sqrt{5}-\sqrt{6(5+\sqrt{5})})}{4+\sqrt{7+\sqrt{5}+\sqrt{6(5+\sqrt{5})}}}})}}\)
\(-\frac{1}{384}(1+i\sqrt{3})\sqrt[3]{\frac{1}{2}(\sqrt{\frac{391378894848(9-\sqrt{5}-\sqrt{6(5+\sqrt{5})})}{4+\sqrt{7+\sqrt{5}+\sqrt{6(5+\sqrt{5})}}}-3131031158784}\ -442368\sqrt{\frac{2(9-\sqrt{5}-\sqrt{6(5+\sqrt{5})})}{4+\sqrt{7+\sqrt{5}+\sqrt{6(5+\sqrt{5})}}}})}\)
となる。
※上の答えには虚数単位\(i\)が含まれていますが、これは実数になることが知られています。
しかし、これは実数であるにもかかわらず虚数単位\(i\)を使わずに表すことができません。
このような性質を還元不能といいます。
まとめ
同様の方法で、\(\cos{1^{\circ}}\)の値も求めることができます。
また、一般に自然数\(n\)に対して\(n\)倍角の公式を作り出すことが出来る(ド・モアブルの定理を用いて実部と虚部を比較すればできる)ため、上で求めた結果から\(\sin{n^{\circ}}\)の値も(理論上は)求めることができます。