はじめに:なぜ「〜的」は現代文で超重要なのか
大学入試の評論文では、「〜的」という語尾をもつ抽象語が、
筆者の立場・論理展開・設問のキー になっていることが非常に多くあります。
たとえば、「恣意的」「対蹠的」「構造的」「批判的」などの語が理解できないと、
読み違え・選択肢の誤答につながるため、難関大ほど頻出かつ重要語になります。
この記事では、共通テスト~難関私大レベルの「〜的」語を分類しながらわかりやすく整理します。
(参考:インスタで連載中の “1日1語シリーズ” と連動しています)
① 抽象思考・対立構造を表す「〜的」語
対蹠的(たいしょてき)
正反対の関係にあること。対照的より強い対立。
例)主観と客観は対蹠的関係にある。

弁証法的
対立する2つの考えを統合して、高次の段階に進む。
(ヘーゲル哲学)
逆説的
一見矛盾しているようで、実は真理を含む状態。

パラドキシカル(paradoxical)
逆説的・常識に反して見えるが意味がある。
二項対立的
自然/文化、主観/客観、感性/理性などの対立で議論を構成すること。
循環的
原因と結果が巡り続ける関係。

還元的
複雑なものを単純な要素に分解して説明しようとする。
(しばしば批判的に使われる)
二元的
物事を二つの要素で割り切る捉え方。
(例:善と悪)
統合的
対立する立場を1つにまとめる方向性。
② 思想・哲学・文化論に関わる「〜的」語
観念的
現実よりも理想・思考・頭の中の世界を優先する。

実存的
今ここに生きる人間の在り方に関わる。
形而上的
目に見えない抽象・精神の領域。
形而下的
感覚でとらえられる具体・物質の領域。
本質的
物事の根本に関わる。
現象的
外に現れた表面の様子。
構造的
背後にある仕組みに注目する。

超越的
現実の範囲をこえる。
内在的
内部に原因・根拠がある(⇔外在的)。
③ 社会・文化批評の「〜的」語
功利的
損得・効用を重視する(=功利主義的)。
功績的
結果や成果で評価する。

機能的
目的を果たす仕組みに注目。
形式的
形だけ整っていて中身が伴わない。
実質的
中身・意味・本体を重視する。
操作的
使いやすさ・運用性を重視する。
制度的
社会のルール・仕組みに基づく。
象徴的
事物が別の意味を示す。

表層的
表面的で浅い。
内面的
心の深い部分に関わる。
④ 科学・論理・知識構造に関する「〜的」語
演繹的
一般法則 → 個別の結論。
帰納的
個別の事例 → 一般法則。
構成的
要素を組合わせて全体をつくる。
分析的
分解して調べる。
体系的
秩序立てて全体で理解する。

批判的
問題点を吟味する(=否定ではない)。
相関的
お互いに関係し合う。
自律的
自分の原理で動く(⇔他律的)。
多義的
一語が複数の意味をもつ。
一義的
意味が1つに定まっている。
⑤ 現代思想・メディア論における「〜的」語
記号的
意味を担うしるしとして存在する。
虚構的
現実ではなく作り物の世界に属する。
二重的(ふたえてき)
表と裏、意識と無意識、自由と束縛などが両立、二つの面を併せ持つ。

媒介的
AとBの間を取り持つ。
差異的
違いによって意味が生じる(デリダ)。
文化相対主義的
文化ごとに価値基準は異なるという立場。

権威的
上から押しつけるような態度。
全体主義的
個人より全体を優先。
排他的
他を受け入れない。

包括的
広く受け入れる(⇔排他的)。

⑥ 表現・言語・芸術に関する「〜的」語
示唆的
はっきり言わずに気づかせる(⇔明示的)。

暗示的
直接言わずほのめかす。
象徴的
(上で出たが)表現ジャンルでも超重要語。
比喩的
たとえ表現。

含意的
言外の意味を含む。
婉曲的
遠回しに表す。

まとめ:現代文の抽象語を「意味×分類」で理解しよう
「〜的」語は、
- 論理構造
- 思想的背景
- メディア論
- 言語論
- 表現の読み取り
など、評論文の中心テーマと直結します。
分類して覚えると
「筆者はどの立場を取っているのか」
「この選択肢は何を根拠にしているのか」
が一気に読みやすくなります。

