導入
自然数の中には特別な性質を持つ数字も数多く存在します。例えば
1:一番小さい自然数 2:一番小さい素数 4:平方数 6:完全数 1729:タクシー数 etc…
このように数々の興味深い性質が見て取れましたが、それらの興味深い性質をまとめて「面白い」という言葉で表現したとき、次の奇妙な事実が証明されてしまいます。
定理: すべての自然数は面白い!!
今回はこの奇妙な定理が成り立ってしまう理由と、この定理に仕掛けられた罠について紹介しようと思います。
証明
数学的帰納法によって「すべての自然数\(n\)について、\(n\)は面白い」を証明する。
(i) \(n=1\)のとき、\(n\)は「一番小さい自然数」という面白い性質を満たしていることから、\(n\)は面白い。
(ii) \(n\leq k\)を満たすすべての自然数について、「\(n\)は面白い」が成り立つとする。
ここで、自然数\(n=k+1\)が面白くないとする。
このとき、\(n\)は「面白くない自然数の中で一番小さい自然数である」という面白い性質を満たしているが、これは\(n\)が面白くないことに矛盾する。
よって、背理法により\(n=k+1\)においても自然数\(n\)は面白いことが分かった。
したがって、すべての自然数は面白い!
この定理の罠 ~言葉の定義の曖昧さ~
一見すると上の証明は論理的には何も間違っていないように見えますが、実はこのパラドックスは「面白い」という言葉の曖昧さから来ています。
数学の世界に出てくる用語は、誰が読んでも全く同じ解釈になるように定義される必要があります。
一方で、ここで定義した「面白い」とはあくまで主観的に定まる概念であることから、上の原則に反します。
(例えば2という数字をAさんが面白いと思っても、Bさんも面白いと思うとは限らないですね。)
よって、そもそもこの証明の主張が曖昧なので、数学的な議論や証明は意味を成しません。
まとめ
数学という学問は、すべての用語を誰がみてもただ一通りに解釈出来るように定義することで成り立っていることが分かったかと思います。
他にも数学のパラドックスはたくさんあるため、興味がある人はぜひ調べてみてください!

