問題
この問では, 0以上の整数の2乗になる数を平方数と呼ぶ。\(a\)を正の整数とし, \(f_a(x)=x^2+x-a\)とおく。
(1)\(n\)を正の整数とする。\(f_a(n)\)が平方数ならば, \(n\leq a\)であることを示せ。
(2)\(f_a(n)\)が平方数となる正の整数\(n\)の個数を\(N_a\)とおく。次の条件(i), (ii)が同値であることを示せ。
(i)\(N_a=1\)である。
(ii)\(4a+1\)は素数である。
方針
(1)背理法により証明する問題。是非得点してもらいたい。
\(n>a\)とすると、\(f_a(n)=n^2+n-a>a^2+a-a=a^2\)となる。
\(a^2\)より大きい平方数は\((a+1)^2\)以上になることを用いて不等式を変形することで矛盾が導かれる。
(2)これは少し難しい。
\(f_a(n)\)が平方数
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(n^2+n-a=m^2\)が成り立つ。
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(x\)についての方程式\(x^2+x-a-m^2=0\)が正の整数解を持つ。
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(x=\frac{-1\pm \sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)の少なくとも一方が正の整数となる。(ここで\(1+4a\)が出てきた!!)
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(x=\frac{-1+\sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)が正の整数となる(※これの同値性については後の補足でみる)。
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(\sqrt{1+4a+4m^2}\)が平方数
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m,l\)に対して、\(1+4a+4m^2=l^2\)が成り立つ
のようにして変形する。
解答
(1)\(n>a\)と仮定する。
このとき、\(f_a(n)=n^2+n-a>n^2\)が成り立つ。
上の不等式と、\(f_a(n)\)が平方数および\(n>0\)となることから、
\(f_a(n)\)は\((n+1)\)以上の整数の2乗になる。
よって、\(f_a(n)\geq (n+1)^2\)
これより、\(n^2+n-a \geq (n+1)^2\)
変形して、\(n+1+a\leq 0\)
\(\therefore n\leq -a-1\)
\(a>0\)であるから\(n\)は負の数となるが、これは明らかに\(n>a\)に矛盾。
よって、\(n\leq a\)
(2)\(f_a(n)\)が平方数となるための条件について見る。
\(f_a(n)\)が平方数
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(f_a(n)=m^2\)
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(n^2+n-a-m^2=0\)
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(\frac{-1\pm \sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)の少なくとも一方が正の整数。
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(m\)に対して、\(\frac{-1+ \sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)が正の整数
(\(\because \frac{-1-\sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)は明らかに正でない。)
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(l,m\)に対して、\(1+4a+4m^2=l^2\)
(\(\because 1+4a+4m^2\)は1より大きい奇数なので、同値として良い)
\(\Leftrightarrow\)ある非負整数\(l,m\)に対して、\(4a+1=(l+2m)(l-2m)\)
これを用いて証明をする。
まず(ii)を仮定する。
\(l,m\)は非負整数より、\(l+2m, l-2m\)は整数で、さらに\(l+2m\geq l-2m\), また\(l+2m\geq 0\)が成り立つ。
\(4a+1\)は素数より、\(4a+1=(l+2m)(l-2m)\)と上の条件から、
\(l+2m=4a+1\), \(l-2m=1\)が成り立つ。
これを解くと、\((l,m)=(2a+1,a)\)となる。
ここで、\(n=\frac{-1+ \sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)であったことから、
\(n=\frac{-1+ \sqrt{1+4a+4a^2}}{2}=\frac{-1+ \sqrt{(2a+1)^2}}{2}=\frac{-1+(2a+1)}{2}=a\)
よって、\(n=a\)のときのみ\(f_a(n)\)が平方数となることから、\(N_a=1\)
したがって、(ii)\(\Rightarrow\)(i)が成り立つ。
次に(ii)の否定を仮定する。(この場合も\(n=a\)については\(f_a(n)\)が平方数となることに注意)
このとき、正の整数\(k,k’\)(\(k\geq k’\))であって、\(4a+1=kk’\)かつ
\(1<k<4a+1,1<k'<4a+1\)となるものがある。
これに対し、\(l+2m=k\), \(l-2m=k’\)が成り立ったとする。
この方程式を解くと、\((l,m)=(\frac{k+k’}{2},\frac{k-k’}{4})\)となる。
今、\(4a+1=kk’\)より\(kk’\equiv 1\)(mod 4)が成り立つが、
これが成り立つのは\(k\equiv k’\equiv 1\)(mod 4)または\(k\equiv k’\equiv 3\)(mod 4)
いずれの場合においても\(\frac{k+k’}{2},\frac{k-k’}{4}\)はともに非負整数となることから、
\((l,m)=(\frac{k+k’}{2},\frac{k-k’}{4})\)は条件を満たす解となっている。
ここで、再び\(n=\frac{-1+ \sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)であることに注意して、
\(n=\frac{-1+ \sqrt{1+4a+4(\frac{k-k’}{4})^2}}{2}=\frac{-1+ \sqrt{kk’+\frac{k^2}{4}-\frac{kk’}{2}+\frac{k’ ^2}{4}}}{2}=\frac{-1+\sqrt{(\frac{k+k’}{2})^2}}{2}=\frac{k+k’}{4}-\frac{1}{2}\)
(\(4a+1=kk’\)も使った)
再び\(4a+1=kk’\)を用いて変形すると、\(n=\frac{1}{4}(k+\frac{4a+1}{k})-\frac{1}{2}\)となる。
ここで、関数\(g(x)=x+\frac{4a+1}{x}\)を考える(\(1\leq x\leq 4a+1\))。
\(g'(x)=1-\frac{4a+1}{x^2}\)となることから、\(g'(x)=0\Leftrightarrow x=\sqrt{4a+1}\)
よって、この関数は区間\([1,\sqrt{4a+1}]\)では(狭義)単調減少し、区間\([\sqrt{4a+1},4a+1]\)では(狭義)単調増加する。
このことと、\(g(1)=g(4a+1)\)より、特に\(1<x<4a+1\)では\(g(x)<g(1)=4a+2\)
\(k\)が\(1<k<4a+1\)を満たすことから、\(n=\frac{1}{4}(k+\frac{4a+1}{k})-\frac{1}{2}<\frac{1}{4}(4a+2)-\frac{1}{2}=a\)
また、\(k,k’>1\)であることから\(n=\frac{1}{4}(k+k’)-\frac{1}{2}>\frac{1+1}{4}-\frac{1}{2}=0\)となる。
よって、\(1\leq n<a\)なる\(n\)で、\(f_a(n)\)が平方数となるようなものが存在するため、
\(n=a\)でも\(f_a(n)\)が平方数となることを踏まえると\(N_a\geq 2\)
よって、(i)の否定が成り立つ。
したがって、対偶をとることで(i)\(\Rightarrow\)(ii)が成り立つ。
以上より(i)\(\Leftrightarrow\)(ii)が示された。
補足
方針の(※)について:結局式の形から\(x=\frac{-1-\sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)は正でないため条件を満たさない。
よって、\(x=\frac{-1+\sqrt{1+4a+4m^2}}{2}\)についてのみ考えれば良い。

