問題
以下の設問では, 区間\([a,b]\)で連続な関数\(f(x),g(x),h(x)\)に対して, 区間\([a,b]\)で\(f(x)\leq g(x)\)ならば\(\int_{a}^{b}f(x)dx\leq\int_{a}^{b}g(x)dx\)であること, および\(|\int_{a}^{b}h(x)dx|\leq \int_{a}^{b}|h(x)|dx\)であることをことわりなしに用いてよい。
(1)自然数\(n\)に対して\(I_n=\int_{1}^{n}(\frac{1}{x})^{\frac{3}{2}}dx\)とする。このとき, \(\lim_{n \to \infty} I_n=\)(ト)である。
(2)自然数\(n\)に対して\(S_n=\sum_{k=1}^{n} (\frac{1}{k})^{\frac{3}{2}}\)とする。すべての\(n\)に対して不等式\[S_n<1+\frac{5\sqrt{2}}{4}\]を証明しなさい。
(3)\(\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}x\cos{5x}dx=\)(ナ)である。
(4)\(k\)を自然数とするとき, \(\int_{0}^{2\pi}|\sin{kx}|dx=\)(ニ)である。
(5)\(f(x)\)を微分可能な関数とし, \(M\)を正の定数とする。区間\([0,2\pi]\)で, \(f'(x)\)は連続かつ\(|f'(x)|\leq M\)と仮定する。自然数\(k,n\)に対して, \(a_k=\int_{0}^{2\pi}f(x)\cos{kx}dx\)とし, \(T_n=\sum_{k=1}^{n}|a_k|^{\frac{3}{2}}\)とする。このとき, すべての\(n\)に対して不等式\[T_n<23M^{\frac{3}{2}}\]を証明しなさい。ただし, 必要であれば(2)の不等式と(4)の等式を証明なしに用いて良い。
方針
(1)定積分が計算できるため、それを計算してから極限を求める。
(2) (1)の誘導をもとにして、面積による不等式評価を行う。
ただし直接(1)を使おうとすると上手くできないことから、評価の「粗さ」が出ないように工夫する。
(3)部分積分を用いて求める。これは死守してほしい。
(4)\(y=|\sin{kx}|\)が周期\(\frac{\pi}{k}\)を持つ周期関数であることに注意して、\(\int_{0}^{2\pi}|\sin{kx}|dx=2k\int_{0}^{\frac{\pi}{k}}|\sin{kx}|dx\)に気づく。
(5)最終的に\(M\)を用いて不等式評価をしたいが、\(M\)は\(f'(x)\)に関連した値である。
よって、\(f'(x)\)を出現させるために部分積分を用いて\(a_k=\int_{0}^{2\pi}f(x)\cos{kx}dx=[\frac{1}{k}f(x)\sin{kx}]_{0}^{2\pi}-\frac{1}{k}\int_{0}^{2\pi}f'(x)\sin{kx}dx\)として計算する。
あとは区間\([a,b]\)で\(f(x)\leq g(x)\)ならば\(\int_{a}^{b}f(x)dx\leq\int_{a}^{b}g(x)dx\)であることや, \(|\int_{a}^{b}h(x)dx|\leq \int_{a}^{b}|h(x)|dx\)であることを用いて評価を行う。
解答

補足
(2)のような長方形たちの面積との比較による不等式評価は典型パターンとなっているため、できなかった人は必ず復習してほしい。
また、(5)で行ったような不等式評価は大学数学の解析学の分野でもしばしば使われるような手法である。興味のある人は調べてみるのもよいかもしれない。

