【数学】2024年 横浜国立大学 理工学部 第5問 解答解説

問題

\(xy\)平面上に、原点\(O\)を中心とする半径\(1\)の円\(C\)がある。さらに、\(n=1,2,…\)に対して、中心\(O_n\)、半径\(r_n\)の円\(C_n\)があり、以下の(i),(ii),(iii)を満たす。

(i) 点\(O_1\)の座標は\((1-r_1,0)\)であり、かつ\(r_1<1\)である。

(ii) \(n=1,2,…\)に対して、\(C_{n+1}\)は\(C\)に内接し、\(C_{n+1}とC_n\)は外接する。

(iii) \(n=1,2,…\)に対して、半直線\(OO_{n+1}\)は\(O\)を中心として半直線\(OO_n\)を時計の針の回転と逆向きに\(2\theta _n\)回転したものであり、\(0<2\theta _n<\pi\)である。

次の問に答えよ。

(1) \(\sin^2{\theta_1}をr_1,r_2\)の式で表せ。

以下、\(r_n=\frac{1}{2^{n+1}+1}\ (n=1,2,…)\)とする。

(2) \(n=1,2,…\)に対して、\(\sin{\theta _n}\)を\(n\)の式で表せ。

(3) \(0<x<\frac{\pi}{6}\)に対して、\[\sin{x}<x<\sin{x}+\frac{1}{5}\sin^3{x}\]を示せ。必要ならば、\(3.14<\pi <3.15\)を用いて良い。

(4) 極限値\(\lim_{n\to \infty} \sum_{k=1}^n \theta _k\)は存在し、その極限値を\(\alpha\)とおく。\(\alpha\)の小数第2位まで(小数第3位切り捨て)を求めよ。必要ならば、\(1.41<\sqrt{2}<1.42\)を用いて良い。

方針

これはかなり時間がかかる問題であるため、もし本番で出た際には後回しでもよい。

(1) \(\triangle OO_1O_2\)に注目し、余弦定理を適用することで\(\cos{2\theta_1}\)の値を求める方針で進める。(そうすれば、半角の公式\(\sin^2{\theta_1}=\frac{1-\cos{2\theta_1}}{2}\)により、\(\sin^2{\theta_1}\)の値が分かる。)

各辺の長さは、内接円・外接円における半径の関係を用いて求める。

(2) \(\triangle OO_nO_{n+1}\)に注目して余弦定理を適用する、ということを考えるが、その際の計算過程は(1)と全く同様にして考えることが出来る

よって、(1)の答え\(\sin^2{\theta_1}=\frac{r_1r_2}{(1-r_1)(1-r_2)}\)の\(r_1,r_2,\theta_1\)をそれぞれ\(r_n,r_{n+1},\theta_n\)に置き換えれば\(\sin^2{\theta_n}\)が求まるため、あとはこれに\(\sqrt{}\)をかぶせればよい。

(3)\(f(x)=x-\sin{x}\), \(g(x)=\sin{x}+\frac{1}{5}\sin^3{x}-x\)とおき、この関数が\(0<x<\frac{\pi}{6}\)なる範囲で常に正となることを示せばいい。

これは微分によって示していくが、\(f(x)\)の方はすぐに分かる。

問題は\(g(x)\)である。これを微分すると\(g^{\prime}(x)=\cos{x}+\frac{3}{5}\sin^2{x}\cos{x}-1\)となるが、この形のままで\(g^{\prime}(x)\)の値の変化を調べようとしても結局複雑な形が出てくるだけで埒があかない。

そこで、相互関係\(\sin^2{x}+\cos^2{x}=1\)により\(\sin^2{x}\)を消去し、\(\cos{x}\)のみの式で表してから考えることが出来るかがこの問題のポイントである。

そうしたら\(\cos{x}=t\)とおき、\(t\)の3次関数として後は考えていけば良い。

最終的に\(g(x)\)は、ある値\(\phi\)を基準として\(0<x<\phi\)で(狭義)単調増加、\(\phi<x<\frac{\pi}{6}\)で(狭義)単調減少することが分かるため、あとは\(g(0)\geq 0\), \(g(\frac{\pi}{6})\geq 0\)を示せば良い(グラフの形状を考えれば分かる)が、\(g(\frac{\pi}{6})\geq 0\)の証明において\(3.14<\pi<3.15\)を用いることに注意。

(4) 各\(\theta_k\)に対して(3)の不等式を適用することを考える。

\(k=1,2,…\)について、\(0<\sin{\theta_k}=\frac{1}{2^{k+1}\sqrt{2}}<\frac{1}{2}\)より、\(0<\theta_k<\frac{\pi}{6}\)となることから、各\(\theta_k\)は(3)の不等式の適用条件を満たしている。(必ず確認!!)

よって、(3)の不等式に\(x=\theta_k\)を代入したものを、\(k=1,2,…,n\)で足し合わせることで、\[\sum_{k=1}^n \sin{\theta_k}<\sum_{k=1}^n\theta_k<\sum_{k=1}^n(\sin{\theta_k}+\frac{1}{5}\sin^3{\theta_k})\]となる。

\(\sin{\theta_k}=\frac{1}{2^{k+1}\sqrt{2}}\)となることに注意すると、最左辺と最右辺が等比数列の和の形になっていることに注意して\(n\to \infty\)とすると、\(\frac{\sqrt{2}}{4}<\alpha<\frac{\sqrt{2}}{4}+\frac{\sqrt{2}}{1120}\)となる。

ここで、\(1.41<\sqrt{2}<1.42\)を使うと、\(\frac{1.41}{4}<\alpha<\frac{1.42}{4}+\frac{1.42}{1120}\)が得られ、最左辺の値は\(0.3525\)となる。

最右辺については\(\frac{1.42}{1120}<\frac{1.42}{284}=0.05\)を使ってさらに大きな値で抑えることで、\(\alpha<0.36\)が得られるため、小数第2位までの値は\(0.35\)と求められる。(わざわざ\(\frac{1.42}{1120}\)を計算する必要はない!!)

解答

補足(発展)

(4)は\(\lim_{n\to \infty} \sum_{k=1}^n\theta_k\)が収束するということを前提として解く問題であったが、実際にこれは収束することが分かる。

その根拠の背景には次のような定理がある。

定理 数列\(\{a_n\}\)が単調増加な数列であって、かつすべての自然数\(n\)に対して\(a_n\)がある一定の値\(M\)以下になるとき、数列\(\{a_n\}\)は収束する。

\(a_n=\sum_{k=1}^n\theta_k\)とおくと、これは\(\theta_i>0\) (\(i=1,2,..\))より単調増加な数列で、さらにすべての自然数\(n\)に対して\(a_n<\frac{\sqrt{2}}{4}+\frac{\sqrt{2}}{1120}\)となることから、\(\{a_n\}\)は上の定理の条件を満たしている。

よって、極限値\(\lim_{n\to \infty} a_n=\lim_{n\to \infty} \sum_{k=1}^n\theta_k\)は収束する。

(※ 上の定理が正しいことについては、大学で実数の集合を「デデキント切断」という概念により定義し直すことで導かれる「実数の連続性」という性質を用いて証明が出来る。)

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